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12月編

◆ 師走の師はだれ?

12月の月名は師走。葉月、霜月などは今の日本ではあまり
使われませんが、師走だけは現役です。12月の日本は13日の
正月の準備を始める『事始め』から始まり、暮れの大掃除、
お歳暮の発送、年賀状作りなどで忙しいので、挨拶にも忙しさを
形容する「師走ですね」と月名が入ります。

ところで、師が走り回るほど忙しいという意味は広く知られて
いますが、師とはだれのことかご存じですか? 答えはお坊さん。
僧侶が仏事で東西を馳せることから、師が馳せる月→しはせ
つき→しわす、となったと言われています。馳せるとは、走る
または急いで行くという意味なので、ゆったりとした佇まいの
印象が強いお坊さんが東奔西走する図は、まさしく忙しさを絵に
描いたよう。お坊さんが仏事で走り回るほど忙しいことは、平安
時代の文献にも記されているそうですから、平安の時代から
日本は12月が忙しい月間だったのですね。現代でも日本は
師走の間は街もあわただしく、空気中に忙しい成分が含まれて
いるように感じられます。年の瀬という気分もあるのでしょう。
ですが、たった1日、大晦日を過ぎて元日を迎えると街の
空気感まで‘ゆったりのんびりモード’に変身。この不思議な
切り替わり方、いつか科学的に立証されたら楽しいですね。


◆ 女の子に悪い虫がつかない?羽子板のナゾ

江戸時代、12月17日~19日は正月用品や縁起物を売る
市(イチ)がたち、『歳の市』と呼ばれました。これが現在は
『羽子板市』として残っていて、年の瀬の風物詩としてニュース
映像にも取り上げられます。この羽子板を使う羽根つき遊びは
室町時代に始まりました。その頃の羽子板は板に花鳥風月
などの絵を描いたシンプルなもの。江戸時代に入ると、押絵
細工などを利用して色彩も立体感もハデになっていきます。
当時の町娘たちに人気だったのは贔屓の役者を描いたもの。
現代も、その年の世相を表す絵柄、話題になったタレントや
スポーツ選手などが3D感たっぷりに表現されています。

羽子板はもともと女の子の健やかな成長を願う風習から
生まれました。理由は・・・羽根が害虫を食べてくれるトンボに
似ていたことから、悪い虫がつかない(?)とも言われ、または
羽根についた黒く硬い豆(むくろじと言います)がマメに暮らせる
という意味だとか、無患子(むくろじ)の名から子が患わ無い
(わずらわない)という意味などのように諸説様々。どの説を
とっても、子どもの健やかな成長祈願のための日本らしい
風習ですね。
この羽子板を女の子が誕生したお家に贈る習慣があった
こと、1年の邪気を祓うためにお正月遊びとして定着した
ことから、正月の縁起物として歳の市で扱われるように
なりました。ミスをしたら筆で墨の×マークをつけられる・・・
という遊びは、さすがに現代の日本では見かけませんが、
女の子がいるお宅では日本の風習としてお話してあげて
ください。



◆ 冬至の入浴剤と食べ物

12月22日頃は1年で最も昼間の時間が短い冬至。この
日を境に日が長くなるので『一陽来復』ともいい、陽気回復の
日として祝った風習もあるようです。
冬至の日には、ゆず湯に入ると風邪をひかないと言われて
います。ゆずの香りが邪気を祓って身を清めてくれるのだとか。
子どもの頃、お風呂にプカンと浮かんでいた木綿袋から、
ゆずのいい香りが立ち上ったことを思い出します。
 
この‘ゆず効能’、現代科学ではもっと明確になっていて、
・香りが良くてリラックス効果がある
・体の芯から温まって風邪予防や神経痛などに効く
・皮の成分が皮膚の保護に有効
などがわかり、入浴剤でもよく見かけます。
また、ゆずはビタミンCとカルシウムを多く含んでいるため、
食べても風邪予防に効果的。柑橘類は皆さんがお住まいの
地域にもたくさんあると思いますが、ゆずは入手できますか?
もし手に入ったら、22日の夜はお風呂に浮かべてお子さんと
いっしょに入浴し、ゆず湯や冬至のお話をしてみてください。
 
また、当日の晩ごはんにはぜひ、かぼちゃ料理を一品。
西洋ではかぼちゃといえばハロウィンですが、日本では
かぼちゃといえば冬至なんです。理由は諸説あるよう
ですが、保存もきいて栄養価の高いかぼちゃで野菜の
少ない冬場の栄養を補ったと考えられています。
ゆずが浮かんだお風呂に入って、晩ごはんはかぼちゃ。
これで、この冬は健康に過ごせること間違いなし?!


◆ 大晦日と年越しそば

12月31日は大晦日。昔は毎月末をみそかと呼び、その年の
最後12月は大みそかと呼びました。ちなみに‘みそ’とは30
のこと。年齢が30代のことを三十路と呼びますよね。1ケ月が
平均30日として30=みそ+日(か)で、みそか・・・ということの
ようです。
 
昔、大晦日は新年の準備を整え、夜は寝ないで歳神様を
迎える日でした。徹夜で歳神様をお迎えした翌日の元日は
昼間の間、寝ていてもOK。これが寝正月の正しい意味です
から、三が日をダラダラと過ごすことを表して「今年は寝正月
です」と言うのは間違った使い方なんですね。
 
さて、大晦日といえば年越しそば。細くて長いそばを食べて
長生きできるようにという縁起かつぎです。これも現代科学
では立証済み。そばには、ビタミンB群やたんぱく質、ルチンや
食物繊維などが含まれ、健康食の代表選手です。31日の
夜はご家族皆さんで、おそばを召し上がってみませんか。
ただし最近は、そばアレルギーを持つお子さんもたくさん
いますよね。細くて長い食材を代役に抜擢して、「いただき
ます」の後に「長生きできますように」とプラスしてみては
いかがでしょうか。
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日本には長い歴史が育んだ世界に誇れる文化があります。
この「おかわり 大人の虎の巻」では、その文化から生まれた
『にほんのならわし』をご紹介していきます。
ここでピックアップするのは、エライ学者さんたちが研究する
難しい文化ではなく、昔から庶民が暮らしに取り入れてきた
身近なものばかり。願いや祈りを込めた大マジメなイベント
からオチャメなものまで、ご紹介していく予定です。
お子さまといっしょに日本を考えるキッカケにお使いください。

文:ごとうたまき
イラスト:たかぎきよか

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