blocks_image
9月編

◆としよりの日 → 老人の日 → 敬老の日

2004年から9月の第3月曜日は「敬老の日」。文字どおり、お年寄りを
敬う日です。この日の産みの親は、なんと兵庫県の小さな村。当時は
野間谷村と呼ばれていた村の村長さんが村役場の人たちと相談して
「お年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」と企画しました。この時期なら
気候もよく、農閑期なので、村のお年寄りを集めて敬老会を開催!この
ムーブメントが兵庫県全体に広まり、全国へと広がっていきました。
コンセプトはよくても、その頃の呼び方は「としよりの日」。あまりにも
失礼なネーミング!? ということで1964年に「老人の日」に改名。って、
これもデリカシーに欠けている・・・。ということで、1966年にようやく
お年寄りを敬うという意味の「敬老の日」に決まりました。
 
2003年までは9月15日が「敬老の日」。この9月15日という日にち
には、聖徳太子のエピソードが関連しているという説もあるそうです。
当時、貧しい人や孤児、病人を救うために聖徳太子が大阪の四天王寺に
悲田院という施設を作った日なのだとか。病院も併設されていたと言い
ますから、日本の福祉の原点ですね。
 
ちなに、外国ではお年寄りを大切にするのは当たり前のこと。日本に
祝日として「敬老の日」があるのは、なんだか妙だなぁと感じたことが
あります。日本も日頃から、お年寄りを大切にする国になってほしい
ものですね。
 
◆にひゃくとおか・・・???

立春から数えて210日目のことで、今年は9月1日。この時期は
台風が多いため、江戸時代から暦に明記され、注意を促してきました。
大切に育てた農作物が被害に合わないように設備を整えたり、漁には
出ないようにするなど、昔の人のリスク回避ですね。
 
この二百十日、誕生の舞台には役者が2人います。それは、暦学者の
渋川春海(しぶかわはるみ)とベテラン漁師さん。ある日、渋川氏が
釣りをするために舟を出そうとしたところ、漁師さんから「今日は
二百十日なのでやめなさい」と言われました。渋川氏は快晴の空を見て
不思議に思いましたが、漁師さんが指をさした方角にはなんと真っ黒い
雲! 予言どおり、すぐに大荒れの天気になりました。そこで、暦学者の
渋川氏は過去のデータも調べ、研究を重ねて「二百十日」を台風に
注意すべき日として、自分が編集した暦本『貞享暦』に書き入れた
ため、庶民にも広く知られるようになったそうです。
科学的な機器を用いて予想する気象庁VSベテラン漁師さんが空を
見て判断する方法、さて当たる確率が高いのはどちら?
 
◆暑さ寒さも彼岸まで

秋のお彼岸は「秋分の日」を中日として、その前後7日間。この間に
お墓参りをしたり、先祖の霊をご供養します。春分の日も秋分の日も、
昼と夜の長さが同じ。なので、この日を境にして、春分の日は寒さが
和らぎ、秋分の日は暑さが和らぐと言われてきました。ですが、温暖化の
現代。ことに猛暑続きの日本の今夏は秋分の日を過ぎても酷暑が続き
そうです。暑さ寒さ・・・は別として、お子さまたちには、日本には年に
2回、お墓参りをする習慣が平成の今になっても残っていることを教えて
あげてください。
 
さて、またしても花より団子のお話。秋のお彼岸では「おはぎ」を食べ
ます。原材料も作り方も春の「ぼたもち」と同じですが、「ぼたもち」が
牡丹の花にたとえて丸く大きめに作るのに対して、「おはぎ」は秋の
七草のひとつ、萩の花にたとえて小ぶりで長めに丸めます。材料が
入手できるようだったら、ぜひお子さまと召し上がってみませんか。

◆オツでイキな重陽の節句

平成の日本では重陽(ちょうよう)の節句を楽しむ家庭も少なくなりました。
重陽の節句とは9月9日のことで、陰陽道に由来したならわし。日本では
昔から奇数は陽の数字とされ、陽が2つ重なる日はめでたいと考えられて
いました。1月1日のお正月、3月3日のお雛様、5月5日の端午の節句、
7月7日の七夕様、そしてこの9月9日の重陽の節句。中でも1の位で
最大の9が重なる9月9日は、特にめでたい日とされ、陽が重なるので
重陽の節句と呼ばれています。
 
この日は、邪気を祓うチカラがあると信じられていた菊の節句とも呼ばれ、
菊酒をいただきます。菊酒とは菊の花びらを浮かべた酒、または菊の
花を浸した酒のこと。また、重陽の節句の前夜、菊の花に綿をかぶせて
おいて、菊の香りと夜露を染み込ませ、その綿で体をふいて不老長寿や
無病息災を願っていたのだとか。なんとも和の日本らしい風流な習慣
ですね。お近くの花屋さんに日本の菊はないと思いますが、キク科の花を
代用として、ぜひ重陽の節句をキメこんでみませんか。
 
◆風流いっぱいの9月、中秋の名月

日本の9月は風流がいっぱい! 重陽の節句の次には、中秋の名月が
あります。今年、名月が楽しめるのは9月22日ですが、これは日本で
観る月の話。皆さんがお住まいの地域では、いつ頃が満月になるの
でしょうか。でも、満月は1年に何回もあるのに、なぜ中秋? それは、
春や夏に比べて空気が乾燥して月が鮮やかに見えるから。そして冬の
月も鮮やかですが、縁側やベランダで鑑賞するには寒すぎるからです。
ということで、中秋になったというわけ。お飾りは魔よけの効力があると
言われるススキなどの秋の七草(萩・ききょう・葛・なでしこ・尾花=ススキ・
おみなえし・ふじばかま)をお供えします。春の七草はお粥で食べますが、
秋の七草は観賞用のみ。あとはお月様に見立てた15個のお団子、
里いもなどの秋の収穫物を供えます。いずれも窓辺など、お月様が
よく見える場所にお供えしてください。
 
パパたちは名月を観ながら一杯!といきたいところ。お子さまたちに「日本の
秋は満月を観賞する習慣があるんだよ」と教えてあげながら、月見酒を
お楽しみください。
blocks_image

日本には長い歴史が育んだ世界に誇れる文化があります。
この「おかわり 大人の虎の巻」では、その文化から生まれた
『にほんのならわし』をご紹介していきます。
ここでピックアップするのは、エライ学者さんたちが研究する
難しい文化ではなく、昔から庶民が暮らしに取り入れてきた
身近なものばかり。願いや祈りを込めた大マジメなイベント
からオチャメなものまで、ご紹介していく予定です。
お子さまといっしょに日本を考えるキッカケにお使いください。

文:ごとうたまき
イラスト:たかぎきよか

blocks_image
おかわりホームページへもどる
blocks_image
大人ホームページへもどる
blocks_image
blocks_image
blocks_image