blocks_image
blocks_image
8月編

◆ ニッポンの夏休み

お子さまの学校の夏休み。皆さんがお住まいの地域と日本では
期間が異なると思います。日本も縦に長いお国柄、ほぼ8/31
までのロングバケーションですが、北海道・東北・長野では7/21~
8/20と短め。その分、この地域では冬休みが長いのです。
ちなみに南半球ではクリスマス時期から1月~2月にかけてが
夏休みだそうです。
アメリカでは夏休みに宿題がないと聞きましたが、日本はどっさりと
宿題が出ます。でも、夏休みから連想するものは、朝のラジオ体操、
林間学校、肝試し、線香花火などなど。日本の子どもたちも、机に
かじりつくよりも、大自然と接したり、普段はできない体験をして
過ごしてほしい気もしますね。
 
◆ 海水浴、今昔物語

海で泳いだり遊ぶことを海水浴と呼ぶのは、もともと病気回復や
健康維持のための自然療法だったからです。イギリスでも18世紀の
半ば頃は海水浴用の馬車を作り、馬車ごと海に入ったそうです。
日本では鎌倉時代に源実朝が鎌倉の海に入って病気を治した
ことが『吾妻鏡』に書かれています。
日本に海水浴場が出現したのは明治18年。当時の軍医の中で
最もエライ人が、神奈川県の大磯海岸を海水浴場として推薦した
ことから始まりました。これがキッカケとなり、湘南海岸や房総
など全国に広まっていきました。
海水浴場といえば‘海の家’。これは日本独特のものですね。昭和の
頃は、よしず張りで出来ていましたが、現代はまるでアメリカ西海岸の
カフェのようなオシャレな海の家もたくさんできています。
でも、海水浴が病気回復や健康のためによいとされていたのは
過去のこと。温暖化の影響で猛暑が続く日本では、美肌のために
日焼けを避け、また今夏は特に熱中症が社会問題になっています。
夏休みが終わる頃には真っ黒に日焼けした子どもたちが元気に
2学期を迎える・・・そんな地球環境に戻ってほしいものですね。
 







◆ 暑中見舞いと残暑見舞い

8月7日、二十四節気では「立秋」。暦の上では、この日から秋に
入るという意味です。時候のご挨拶も、この日を境に暑中見舞い
から残暑見舞いへと文面が変わります。「立秋とは名ばかりで、
まだまだ暑い日が続きますが…」という定型の表現がよく使われ
ますが、実際もこの頃が暑さのピークです。
最近はメールのやりとりがほとんどで、残暑見舞いのハガキが
届くことは少なくなりました。でも、その心は生きていて、メールの
冒頭にも「残暑お見舞い申し上げます」というフレーズを付けたり
します。
暑いのでお見舞いを申し上げるというのは日本特有の気づかい。
お子さまにも、お手紙やメールを送る際に、この時期の日本では
「残暑お見舞い申し上げます」と相手を気遣うことを教えてあげて
ください。ちなみに・・・残暑見舞いなどの季節のご挨拶は、「拝啓」
などの頭語や「敬具」などの結語は不要。末尾に「○○年 盛夏」
などと表記するとスマートです。
 
◆ 日本の音色、風鈴

夏の風物詩、風鈴。皆さんのお宅には、ありますか?
ぶらさがっている短冊が風にゆれて、チリンチリンと風雅な音色を
奏でます。風鈴といえばガラス製がポピュラーですが、これは江戸
風鈴と呼びます。他にも鉄製の南部風鈴、瀬戸の焼き物で作られた
瀬戸風鈴などがあります。鎌倉時代には現代の風鈴の原型を
使って音色占いをしたと言いますから、日本人が風鈴を楽しんだ
歴史は古いですね。
江戸風鈴は江戸時代、振り売り(天秤棒で商品を運びながら商売を
する人)で売られていました。ほとんどが「きんぎょー、きんぎょ」などの
ように商品名を大きな声で宣伝しながら街中を歩きましたが、風鈴
だけは別。音色の良さが最高のPR方法だったため、風鈴売りだけは
無言で売り歩いたそうです。
外国の人たちは風鈴の音色が耳触りと感じるケースが多いそうです。
強風でハデな音が出れば騒がしいかもしれませんが、夏の微風に
チリチリン♪と鳴る音色は日本の町民文化のひとつ。涼やかな
日本の音色をお子さまにも、ぜひ体感させてあげてください。
 
=========================================================

ちょっとむずかしいけど、ためになるお話
 
◆ お盆

お盆はご先祖様の霊をお迎えして、なぐさめる行事。日本古来の
祖先を崇拝する信仰と仏教が結びついたものです。東京生まれの
私は7月の方がピンときますが、日本の大半は8月に行う地域が
多いようです。8月に行うのは、都市部で働く人たちが故郷へ帰省
するタイミングに合わせやすいこと、そして農家の仕事が一段落
する時期だからという理由もあるようです。
ご先祖様の霊は13日に訪ねてきて、14日と15日は家に留まり、
16日に帰って行くとされています。13日と16日には家の門などで
火を焚きますが、これをお迎え火、送り火と言います。送り火で
有名なのが、8月に行われる京都市東山の「大文字焼き」。盆の
送り火としての火祭りで、大がかりな伝統行事です。
ご両親の中にはナスやキュウリに割り箸をさして、馬や牛を作った
記憶がある方も多いのではないでしょうか。これはご先祖様への
供養のひとつ。このキュウリ馬やナス牛にご先祖様が乗って、喜んで
帰っていただくようにというものです。
 
◆ 盆踊り

8月は夕方になると、太鼓の音や東京音頭などの曲が聞こえ
始めます。あちらこちらで盆踊りが開催されるのです。盆踊りは、
ご先祖様の霊を音曲と踊りで歓迎し、慰め、見送るためのもの。
櫓(やぐら)のまわりを輪になって踊る円舞式がよく見かける
盆踊り風景ですが、行列を組んで踊りながら行進する方式も
あります。その代表格が徳島の阿波踊り。400年以上の歴史が
ある全国最大規模の盆踊りです。
お子さまたちにとっては盆踊りよりも、その周囲にある縁日の方が
魅力的かもしれませんね。日本の夏、ご帰国される予定のある方は、
ぜひお近くの盆踊りや縁日を体験させてあげてください。
blocks_image

日本には長い歴史が育んだ世界に誇れる文化があります。
この「おかわり 大人の虎の巻」では、その文化から生まれた
『にほんのならわし』をご紹介していきます。
ここでピックアップするのは、エライ学者さんたちが研究する
難しい文化ではなく、昔から庶民が暮らしに取り入れてきた
身近なものばかり。願いや祈りを込めた大マジメなイベント
からオチャメなものまで、ご紹介していく予定です。
お子さまといっしょに日本を考えるキッカケにお使いください。

文:ごとうたまき
イラスト:たかぎきよか

blocks_image
おかわりホームページへもどる
blocks_image
大人ホームページへもどる
blocks_image