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11月編

◆ 七五三

平成生まれのパパやママが出現している日本。それでもこの
七五三のお祝い事は、ちゃんと引き継がれていて、11月に
なると晴れ着を着た子どもたちが裾に足をとられて転びそうに
なりながら歩く姿を見かけると、微笑ましい気持ちになります。
男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳。七と五と三の
数字も、やはり奇数が縁起がよいという陰陽道の思想から
きています。健やかな成長を祈念して悪霊を祓う儀式でもあり、
子どもたちに成長を自覚させるための儀式でもあります。という
のも、現代のように医学が発達していなかった昔は7歳までに
亡くなる子どもが非常に多かったため、7歳を過ぎると社会の
一員として認められ、それを祝う意味もあったからです。
 
11月15日に神社にお参りするのが正解ですが、現代は親の
都合などに合わせて近い日にお参り。ちなみに11月15日の
お参りデーは、江戸時代、三代将軍・家光公の子ども徳松君
(五代将軍の綱吉)の5歳の成長をこの日に祝ったことから
定着したようです。
 
ところで、晴れ着を用意するのは今も昔も親にとっては大変な
出費。江戸時代の川柳に「いたいこと帯と袴で十二両」「十五日
江戸で争う肩車」などが残っています。今は6ポケッツの時代。
祖父祖母にとって「いたいこと帯と袴でン十万円」なのかも
しれませんね。
 

◆ 千歳飴

七五三といえば千歳飴。あのほんのりとした甘さや独特の食感を
懐かしく感じる方も多いのではないでしょうか。
千歳飴の起源については諸説あるようですが、江戸時代に浅草の
飴屋が考案した紅白の棒状の「祝飴」(いわいあめ)が発祥という
説に1票。これは、浅草寺境内で「千年飴」として売られていたそう
です。「千歳」とは「千年」のこと。飴を引っ張ると伸びること、細長い
形状から、子どもの長命への願いが込められています。千歳飴は
松竹梅や鶴亀のめでたい絵が描かれた袋の中に、祝う子どもの
年の数だけ入れるとよいのだとか・・・。ということは、7歳の女の子が
持つ千歳飴袋は7本も入る!? ちょっと重そうですよね。
七五三のお祝いをいただいた人へは千歳飴と赤飯でお返しを
するのが通例。でも、みなさんがお住まいのエリアでは千歳飴は
入手困難かな?
 
 
◆ 11月の花は柊(ヒイラギ)

四季のある日本では、その月を表現する花や植物があります。
11月はサザンカや菊、そして柊。ヒイラギと聞くとクリスマスに
登場する赤い実の付いたトゲトゲの葉っぱを連想して、洋物
じゃない?と思っていましたが、それはイングリッシュホーリーと
いう西洋ヒイラギ。ここでご紹介するのは和の柊です。
モクセイ科で原産国はなんと日本。固くてトゲのある葉に触ると
痛い→痛むを意味する「ひいらぐ」から、この名前になりました。
ヒイラギは痛いという意味だったんですね。また、このトゲトゲは
昔から邪気を払うと言われ、節分の時には柊に鰯の頭を刺す
習慣があります。
 
ちなみに、この柊、老木になるとトゲがなくなって葉が丸くなるの
だそうで・・・。とんがっているのは若い時代だけって、人間と同じ?
お住まいのエリアでは西洋ヒイラギしか見かけないと思いますが、
ぜひ和風の器に生けてプチ日本をお楽しみください。

 
◆ 勤労感謝の日は和風サンクスギビング・デー?!

11月23日は勤労感謝の日で国民の祝日。昭和23年に制定
されたといいますから、戦後の混乱の中で決められたことに
なりますね。そもそも勤労を感謝してお休みにするって、どんな
意味?と子どもの頃は不思議に思っていました。正しくは『勤労を
尊び、生産を祝い、国民がたいがいに感謝しあう日』なのだとか。
 
由来をヒモといていくと、もともとは『新嘗祭(にいなめさい)』
から生まれたもの。新嘗祭とは宮中行事で、天皇陛下がその
年に採れた新しい穀物を天神・地神に捧げて感謝し、共に
食べるという儀式です。ということは、収穫を神に感謝して祝うと
いうこと。アメリカの『サンクスギビング・デー』と気持ちは似て
いますよね。現代のように情報の交流がなかった昔でも、
世界中に似たような主旨の風習やお祭りがたくさんあります。
言葉や生活習慣は違えども、人間が営む暮らしの中には同じ
想いが潜んでいる。なんだか「世界はひとつ、人類みな兄弟」
という気がしませんか。異国の地で育っている皆さんのお子さん
たちには、地球規模でモノゴトを考えるボーダーレスで大らかな
度量を持った大人になってほしいものですね。
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日本には長い歴史が育んだ世界に誇れる文化があります。
この「おかわり 大人の虎の巻」では、その文化から生まれた
『にほんのならわし』をご紹介していきます。
ここでピックアップするのは、エライ学者さんたちが研究する
難しい文化ではなく、昔から庶民が暮らしに取り入れてきた
身近なものばかり。願いや祈りを込めた大マジメなイベント
からオチャメなものまで、ご紹介していく予定です。
お子さまといっしょに日本を考えるキッカケにお使いください。

文:ごとうたまき
イラスト:たかぎきよか

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