7月編
◆ 七夕は悲恋物語?
織姫と彦星が1年に1度しか会えない七夕は悲恋物語?
シナリオをひもといてみると、2人は結婚後、遊ぶことが楽しくて
働かなくなったので天の神様が怒り、川の両サイドに引き離した
という顛末。ということは、つまりは自業自得!? でも、会うことを
許された7/7に雨が降ると会えないので、やはり悲恋物語
かもしれませんね。この七夕、実は日中合作型の行事。中国の
古い伝説『織姫と彦星の恋物語』と日本の『棚機津女(たなばた
つめ)』という奈良時代に行われていた女性の裁縫の上達を
願った行事をミックスしたものだそうです。最初は七夕を「しち
せき」と呼んでいましたが、棚機(たなばた)と掛け合わされて
七夕=たなばたとなったそうです。
ところで、皆さんは童謡の「たなばたさま」をちゃんと歌えますか?
うろ覚え・・・という方のために、ご紹介しておきます。
1 ささの葉 さらさら のきばにゆれる
お星さま きらきら きんぎん 砂子(すなご)
2 五しきの たんざく わたしが かいた
お星さま きらきら 空から見てる
ぜひ、お子さんと歌ってみてくださいね。
さて、この歌詞にある「五しきの たんざく」とは、古代中国の自然
哲学の思想『五行説※』にあてはまる緑・紅・黄・白・黒の5色の
こと。でも、短冊に願い事を書いて飾るのは日本だけです。『棚機
津女』の行事で裁縫が上達しますようにと祈る行為が残ったよう
ですね。織姫さまも機織りが上手というキャラクター設定なので、
あやかろうとしたのかもしれません。ちなみに、短冊を飾る笹。
これは、昔から邪気を祓うといわれてきた植物なので採用された
ようです。
またまた花より団子の話になってしまいますが、七夕の日に
食べる特別なものといえば、なんとソーメン。地域によっては、
その風習が残っているそうです。理由は諸説ありますが、麺を
天の川に見立てたという、日本人らしいオツな説に一票。
さて、今年の7月7日、織姫と彦星は会えるでしょうか。日本は
梅雨時なので、彼らにとっては過酷な環境かもしれません。
※五行説とは・・・古代中国の自然哲学の思想。
万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説。
◆ 土用の丑の日は江戸時代のマーケティング戦略?
子どもの頃、母が「どようのうしのひだから、うなぎを食べる」と
言うと「土曜日は牛肉を食べるの?」と不思議に思った記憶が
あります。土用とは、これもまた古代中国の自然哲学の思想
『五行説』に基づいた季節の分類法で、立春・立夏・立秋・立冬の
前の18日間のこと。つまり、年に4回ありますが、現代は特に
夏の土用を指します。2010年の今年は、7月26日が土用の
丑の日です。この日に鰻を食べるのは、確たる根拠があるワケ
ではなく、もっともらしい謂われがあるわけでもありません。
時は江戸時代、平賀源内という天才がいました。学者であり、
発明家でもあった彼は庶民から尊敬される存在。その源内さんに、
ある日、知り合いの鰻屋さんが「夏は客足が落ちて困ります」と
相談を持ちかけました。一計を案じた源内さん、店先に「土用の
丑の日は‘う’のつく鰻を食べるとよい」と宣伝しました。何のコト
だかわからなくても新しい物好きの江戸っ子たち、すぐにお客が
押し寄せたそうです。これがコトの真相。この企画は素晴らしい
江戸時代版マーケティングですし、源内さんは名コピーライター
ですね。
ではなぜ、源内さんが‘う’のつく鰻を!と薦めたのでしょうか。
それは、‘う’のつく食材を食べると夏負けしないという古くからの
言い伝えを利用したのでは?と推測されています。この時代の
こと、科学的な根拠はなかったのですが、現代科学では鰻に
良質のたんぱく質と脂質、ビタミンA・B・D・E、カルシウム、鉄、
亜鉛、DHA、ミネラル類などが含まれ、夏のスタミナ源としての
栄養バランスがいいことが証明されています。先人たちが体の
声に耳を澄ませて作った言い伝えに、実は科学的根拠がある。
便利なモノに囲まれて暮らす現代人が失ってしまったアンテナを
先人たちは持っていたのでしょう。
ちなみに、‘う’のつく食材には梅干しや瓜もよいと言われています。
皆さんも‘う’のつく食材を食べて、今年の夏を元気にお過ごしください。
◆ ファイヤーワークスではないニッポンの花火
北京オリンピックや上海万博の開幕式など世界的なイベントに
欠かせない花火。ちなみに北京五輪の足あと型花火はCG合成
だとわかり、物議をかもしましたね。皆さんがお住まいの地域でも
ファイヤーワークスが見られるのではないでしょうか。でも、外国で
見られる花火は色も形状もシンプル。平成の今、日本の夏の夜空に
咲く花火は、実にたくさんの種類があります。中でも、年々進化して
いるのが『型物』と呼ばれる種類の新作。麦わら帽子やリボン、キティ
ちゃんやニコちゃんマークの形が夜空にぽっかりと浮かびます。
ちなみに、最も大きい花火があがるのは、新潟県の片貝まつりの
4尺玉。直径800mの大輪はギネスブックでも認定された大きさです。
さて、この花火大会をイベントとして始めたのは江戸時代8代将軍の
吉宗公です。楽しいお祭りを庶民に提供するなんて、粋な将軍さん?
いえいえ、実はこの頃に凶作と疫病の流行が重なったため、吉宗公は
犠牲となった人々の慰霊と悪疫除けを祈って、当時の大川、今の
隅田川で水神祭を行ったのです。その際、川の両サイドにあった
料理屋が献上花火を打ち上げたのが最初。当時、花火屋として有名
だったのが『鍵屋』と『玉屋』。その見事さに江戸っ子たちは「かぁぎやぁー」
「たぁまやー」と声を掛け合いながら、浴衣で花火見物をしていました。
花火大会は浴衣を着て・・・というのがニッポンの夏の風物詩。今年の
夏、花火大会へ出かけたり、お庭で線香花火を楽しむ機会があったら、
ぜひお子さんに浴衣を着せてあげてください。
◆ 七夕は悲恋物語?
織姫と彦星が1年に1度しか会えない七夕は悲恋物語?
シナリオをひもといてみると、2人は結婚後、遊ぶことが楽しくて
働かなくなったので天の神様が怒り、川の両サイドに引き離した
という顛末。ということは、つまりは自業自得!? でも、会うことを
許された7/7に雨が降ると会えないので、やはり悲恋物語
かもしれませんね。この七夕、実は日中合作型の行事。中国の
古い伝説『織姫と彦星の恋物語』と日本の『棚機津女(たなばた
つめ)』という奈良時代に行われていた女性の裁縫の上達を
願った行事をミックスしたものだそうです。最初は七夕を「しち
せき」と呼んでいましたが、棚機(たなばた)と掛け合わされて
七夕=たなばたとなったそうです。
ところで、皆さんは童謡の「たなばたさま」をちゃんと歌えますか?
うろ覚え・・・という方のために、ご紹介しておきます。
1 ささの葉 さらさら のきばにゆれる
お星さま きらきら きんぎん 砂子(すなご)
2 五しきの たんざく わたしが かいた
お星さま きらきら 空から見てる
ぜひ、お子さんと歌ってみてくださいね。
さて、この歌詞にある「五しきの たんざく」とは、古代中国の自然
哲学の思想『五行説※』にあてはまる緑・紅・黄・白・黒の5色の
こと。でも、短冊に願い事を書いて飾るのは日本だけです。『棚機
津女』の行事で裁縫が上達しますようにと祈る行為が残ったよう
ですね。織姫さまも機織りが上手というキャラクター設定なので、
あやかろうとしたのかもしれません。ちなみに、短冊を飾る笹。
これは、昔から邪気を祓うといわれてきた植物なので採用された
ようです。
またまた花より団子の話になってしまいますが、七夕の日に
食べる特別なものといえば、なんとソーメン。地域によっては、
その風習が残っているそうです。理由は諸説ありますが、麺を
天の川に見立てたという、日本人らしいオツな説に一票。
さて、今年の7月7日、織姫と彦星は会えるでしょうか。日本は
梅雨時なので、彼らにとっては過酷な環境かもしれません。
※五行説とは・・・古代中国の自然哲学の思想。
万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説。
◆ 土用の丑の日は江戸時代のマーケティング戦略?
子どもの頃、母が「どようのうしのひだから、うなぎを食べる」と
言うと「土曜日は牛肉を食べるの?」と不思議に思った記憶が
あります。土用とは、これもまた古代中国の自然哲学の思想
『五行説』に基づいた季節の分類法で、立春・立夏・立秋・立冬の
前の18日間のこと。つまり、年に4回ありますが、現代は特に
夏の土用を指します。2010年の今年は、7月26日が土用の
丑の日です。この日に鰻を食べるのは、確たる根拠があるワケ
ではなく、もっともらしい謂われがあるわけでもありません。
時は江戸時代、平賀源内という天才がいました。学者であり、
発明家でもあった彼は庶民から尊敬される存在。その源内さんに、
ある日、知り合いの鰻屋さんが「夏は客足が落ちて困ります」と
相談を持ちかけました。一計を案じた源内さん、店先に「土用の
丑の日は‘う’のつく鰻を食べるとよい」と宣伝しました。何のコト
だかわからなくても新しい物好きの江戸っ子たち、すぐにお客が
押し寄せたそうです。これがコトの真相。この企画は素晴らしい
江戸時代版マーケティングですし、源内さんは名コピーライター
ですね。
ではなぜ、源内さんが‘う’のつく鰻を!と薦めたのでしょうか。
それは、‘う’のつく食材を食べると夏負けしないという古くからの
言い伝えを利用したのでは?と推測されています。この時代の
こと、科学的な根拠はなかったのですが、現代科学では鰻に
良質のたんぱく質と脂質、ビタミンA・B・D・E、カルシウム、鉄、
亜鉛、DHA、ミネラル類などが含まれ、夏のスタミナ源としての
栄養バランスがいいことが証明されています。先人たちが体の
声に耳を澄ませて作った言い伝えに、実は科学的根拠がある。
便利なモノに囲まれて暮らす現代人が失ってしまったアンテナを
先人たちは持っていたのでしょう。
ちなみに、‘う’のつく食材には梅干しや瓜もよいと言われています。
皆さんも‘う’のつく食材を食べて、今年の夏を元気にお過ごしください。
◆ ファイヤーワークスではないニッポンの花火
北京オリンピックや上海万博の開幕式など世界的なイベントに
欠かせない花火。ちなみに北京五輪の足あと型花火はCG合成
だとわかり、物議をかもしましたね。皆さんがお住まいの地域でも
ファイヤーワークスが見られるのではないでしょうか。でも、外国で
見られる花火は色も形状もシンプル。平成の今、日本の夏の夜空に
咲く花火は、実にたくさんの種類があります。中でも、年々進化して
いるのが『型物』と呼ばれる種類の新作。麦わら帽子やリボン、キティ
ちゃんやニコちゃんマークの形が夜空にぽっかりと浮かびます。
ちなみに、最も大きい花火があがるのは、新潟県の片貝まつりの
4尺玉。直径800mの大輪はギネスブックでも認定された大きさです。
さて、この花火大会をイベントとして始めたのは江戸時代8代将軍の
吉宗公です。楽しいお祭りを庶民に提供するなんて、粋な将軍さん?
いえいえ、実はこの頃に凶作と疫病の流行が重なったため、吉宗公は
犠牲となった人々の慰霊と悪疫除けを祈って、当時の大川、今の
隅田川で水神祭を行ったのです。その際、川の両サイドにあった
料理屋が献上花火を打ち上げたのが最初。当時、花火屋として有名
だったのが『鍵屋』と『玉屋』。その見事さに江戸っ子たちは「かぁぎやぁー」
「たぁまやー」と声を掛け合いながら、浴衣で花火見物をしていました。
花火大会は浴衣を着て・・・というのがニッポンの夏の風物詩。今年の
夏、花火大会へ出かけたり、お庭で線香花火を楽しむ機会があったら、
ぜひお子さんに浴衣を着せてあげてください。
日本には長い歴史が育んだ世界に誇れる文化があります。
この「おかわり 大人の虎の巻」では、その文化から生まれた
『にほんのならわし』をご紹介していきます。
ここでピックアップするのは、エライ学者さんたちが研究する
難しい文化ではなく、昔から庶民が暮らしに取り入れてきた
身近なものばかり。願いや祈りを込めた大マジメなイベント
からオチャメなものまで、ご紹介していく予定です。
お子さまといっしょに日本を考えるキッカケにお使いください。
文:ごとうたまき
イラスト:たかぎきよか
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