第一話『もったいない話』


 アメリカの幼稚園に勤務して気づいたのは、こちらの子供たちは物を大切にしない、ということ。例えば平気で本の上に座ったり、足で踏むこともあります。そして驚いた事に、その壊れた本を修理する人は誰もいないのです。1ページなくなった本があると「この本はもう捨てましょう」と皆は直ぐに諦めてしまいますが、「いえ、きっとどこかにあるはず。見つかるまでとっておいて、後で直しましょう」と私は言い返し、後日そのページが見つかった時、子供たちと一緒にテープを貼って直すのです。

 私たちの文化には、物を大切にする習慣が古くからあります。江戸時代の商人たちは「リサイクル」を上手に商売にしていました。例えば、瀬戸物の焼き接ぎは、壊れた瀬戸物を白玉粉で接着していたそう。紙屑買いは、今で言う「ちり紙交換業」です。アメリカでは地域によりガラス瓶やペットボトルを換金してくれる所もありますが、主にホームレスの人々が収入源として行うことが多く、一般の人は面倒だからと言って敬遠しているのが現実です。

 また、市販されているおもちゃは値段が安く便利ではあるものの、すぐに壊れてしまいます。物は大事に、上手に扱うことで長持ちします。壊れても簡単に直せるものは直し、また使ってあげることで「物の命」を大切にすることができます。子供が脱いだ時にボタンが取れてしまった服、砂場で長時間遊んでいて、ぽっかりと膝が開いてしまったパンツ。いつもは捨てていたその服も、繕ったり、アップリケ等をつけて直すことでまた着ることができます。

 家庭で物を大事に使う習慣を少しでも身につけると、それが学校生活でも反映してきますが、子供一人の力ではそれを広めることが難しいのが現状です。そこで親である私たちも参加するのはどうでしょう。こちらの学校ではボランティアを多く受け入れているので、時間があったら図書館の本の修理に出向いてはいかがでしょうか?

 それでは最後に、今回のテーマにあった本の紹介をします。
「もったいないばあさん」真珠 まりこ 作・絵

一部紹介
~おさらのうえにたべのこし、おちゃわんいついたごはんつぶ もったいなーいといってくるよ。「こんなにのこしてもったいない わたしが食べてもいいのかい」ぱくぱくごくごくぺろぺろ~

もったいないばあさんが子供たちにやさしく物を大切にする、一つのことでなくほかのことにも使える、というメッセージを伝えます。

この本を読んで、物を捨てる前にもう一度何か出来るかを考え直してみるのもいいかもしれません。



語り手:
かとうくみこ

日本の風習をもう一度みなおしてみませんか

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